Delayと位相ズレ

いや、Smaart使ってどうこう、ってハイレベルなハナシじゃなく。
こないだfacebookで「アナログとデジタルのマイクを混在させたら、レイテンシーのお陰で逆相になって音が小さくなった」って書き込みを見かけまして。
もちろん識者の方々は、倍音を普通に含んだ音声ならばそんな現象起こりえないとご存じでしょうが、ちょっと実験してみました。

まずはこの状態で、両マイクとも同ゲインで喋ってみます。もちろん普通に音になります。

そして片方のチャンネルに5msec、10msecとディレイをかけていきます。あれあれ、もっとコムフィルタがハデにかかるかと思ったけど、あまり差がないな。もちろん音量も変化ありません。

ま、ここまでは当然の結果です。
では、最初の問題はなぜ現れてしまったのか。条件としては、どうやら素人さんと芸人さんの2Shotで、芸人さんが声を張ると音が小さくなった、とのこと。
そこから考えられるのは、
・もともと各チャンネル(というか、マイク自体)が逆相だった
・芸人のchはGainが低く設定されている
・二人が向き合って喋り、芸人が声を張ったときに、自分のマイクと素人さんのマイクにカブる
・二人の距離関係とそれぞれの音量がある一定の条件を満たしてしまう→音量減少

ということなのではないかと思います。

それも実験してみました。

左のマイクが芸人(Gain小、距離短、正相)右のマイクが素人(Gain大、距離長、逆相)とします。
左のマイクに向かって声を出し、声量を調節すると、案の定音量が小さくなる場合が確認できました。

ま、こんなこと音声収録の現場を長くやってると、そういえばあったな、って思い出すこともありますけどね。せっかくなのでここに残しておきます。

P.S.そのfacebookの他の方のコメントで「きちんとDelayかけて揃えるべき」という書き込みがあったのが気になります。
え、上記の実験でもわかるとおり、DelayやLatencyでは音量の大小は(コムフィルタ効果は別として)起こりえないのですが...もしかしたらテレビ音声さんの世界では、こういうことがまことしやかに言われているのでは?と、ちょっと気になってしまいました。
#テレビカメラマンの中に、音量レベルが違うことを「インピーダンスが違うからね」って言い切ってる人が以前いたので、疑ってかかってしまいます...

【補足】
「同じ音の片側にDelayをかけるとコムフィルタ効果がかかる」と書きましたが、「コムフィルタ効果を得るためにDelayをかける」と書き直すと、Delayをかけただけで音量が変わらない(音色は変わる)というのが理解しやすいですね。
コムフィルタを解説したYouTubeを発見したのでリンクしておきます。